ロ ン リ ン
■住所 : 福岡市「城南区」別府団地入口
■電話番号 : 092-851-9880
■営業時間 : 11:30〜20:00

■お店の沿革
「福岡市西区別府団地入口」、ロンリンオリジナルのマッチに書かれたお店の住所である。「もう開店当初の27年前から変えてないんです」。今では、「城南区」に含まれるここ別府地区も、1972年福岡市が政令指定都市となった当初から、10年後の行政区再分割(西区・早良区・城南区)までは、「西区」の一部とされてきた。築年数40年以上という、なんとも歴史を感じさせる店の佇まい。「キィー」という鈍い音とともに扉をあけると、中には、温かな照明のもれる落ち着いた空間が広がっている。
「もうね、全部ガタガタよ(笑)ドアくらい直しなさいよってお客さんには言われるんだけどね…」と、愛おしそうに店内を眺めるのが、現在は一人でお店を切り盛りしているという奥さんである。家具も家電も「ここにあるものは、全部時代もの」。その中でも、「このテレビは若い子はすごく珍しがりますよ。小さくて四角い、でもそれだけじゃなくて、リモコンもまだないのよね」。しかし、そのどれも「大切にされてきたのだなぁ」と一目で分かる位にピカピカに磨かれていて、古さの中にも変わらない「美しさ」がある。時の流れとともにその品格をましたものたちのつくりだす時間は、どこまでもゆっくりで、誰もが日常のせわしさから解放され、つかの間の休息を味わうことができる。

■メニュー
「開店当時から味も値段も変えてません」と、そのメニューは昔ながらの喫茶店そのもの。
タカナピラフ・焼き飯は450円、トーストはなんと200円から。
バターの効いた料理はどれも、サイホンで入れるスッキリとした珈琲(400円〜)と相性ピッタリだ。
奥さんが一品一品丹念につくる料理のそれぞれは、決してスピーディーとはいえないが、それでも静かな店内に広がるバターのほのかな香りやフラスコの中にポコポコと湧き出る珈琲の音色は、見るもののお腹も心も優しく満たしてゆく。

■お店の変化・学生の変化
「30年前までは、学生さんもよくコーヒーを飲みにきてたみたいだけどね」。当時は、自販機の普及などまだまだ、喫茶店がなければコーヒーなど飲めない時代だった。六本松の街にも、昔は、「もう歩かなくてもすむくらい」多くの喫茶店が軒を連ねていたそうだ。「15年くらい前からかしら、次第になくなってね。今となっては、三和珈琲館やカビリアカフェくらいですかね。」
しかし、社会の変化と共に、「学生さんも変わっちゃったのかもしれませんね」と奥さんは指摘する。
「今は、学生さんといってもお金もってるでしょ、社会人なんかよりもずっと。自分だけの綺麗な部屋を持って、そこでゲームやパソコン、メールなんかで楽しんでね。こうやって喫茶店で会話することも嫌がるんじゃないかしら」。およそ20年前の田島寮の改装以来、学生が激減したのも、結局はそういうことなのかもしれないと奥さんは語る。「良くも悪くも綺麗になったんですよね、学生さんが」。
近くのスナック「洋酒大学」も、かつては、上級生が下級生を連れてくる、その下級生がまた次の下級生を連れてくると、芋づる式に学生が流れ込み、夜までは飲み遊んだ「九大生の店」だったそうだ。「昔は夜中まで飲んで、酔いつぶれて、その辺に寝てるって光景もよくみましたよね。でも、今は学生さんはほとんどいないみたいですよ。なんか今の学生さんは、上下関係も厭うみたいですね。先輩が後輩を連れて行っても、後輩はどうも馴染めないってね。今は、天神のカクテルバーあたりで静かに飲んでいるんでしょうね」。
今では、お客さんの大半は近くに住む年配の方だそうだ。「若い子が店にくるだけでもう珍しい」と奥さんは言う。「数年で本当に色んなことが変わりましたね」。

■九大移転について
「よくなると言う人もいますよ」。九大が抜けた跡地については、南側には裁判所の移転が既に決定しており、残りの北半分はUR都市機構が買い取る形となった。「学生の代わりに社会人が増えるでしょうからね。新しく流入してくる分には期待してもいいんじゃないですか」。ただ、「それも学生向け以外のお店に限ってですけどね」。


今では、学生はほとんどこないという「ロンリン」さん。しかし、30年前の学生も私たちと同じように、勉強に悩み、恋愛に悩み、人生に悩み、この場所で静かに思いを巡らせていたのではないかなと思います。変わったことはもちろん多くありますが、それでも変わらずに受け継がれているものが、私たち学生の中にもきっとあるのだろうと思います。
「まだ帰りたくない」そう思わせる店内の雰囲気は、これまで奥さんが守り続けてきた27年という歴史の中で少しずつ醸成されてきたものであると思います。店内から漏れ出るやわらかな空気に誘われて、またふらりと遊びに来ます。そのときは、また珈琲の入れ方教えてくださいね。

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(C)2008 箱崎九大記憶保存会