きんしゃいきゃんぱす
( 通称:きんきゃん )
( 通称:きんきゃん )
■■住所 : 福岡市東区箱崎1-32-31 箱崎商店街きんしゃい通り内
■■連絡先 : tomonari_sf@jcom.home.ne.jp /代表・山下智也
■■開いてる時間 : 16:00〜18:00(平日)
箱崎商店街、きんしゃい通りの一角に「きんしゃいきゃんぱす」という子どもの遊び場があるのをご存じでしょうか。ここは現役の九大生によって運営されており、平日は毎日開いています。周辺は子ども達の元気な遊び声で活気がいっぱい!なんともユニークな取り組みをしている「きんしゃいきゃんぱす」、代表の山下智也さんにインタビューをしてきました。
◇沿革
きんしゃい通り
もともとは商店街の空き店舗を研究室に活用しようということで、箱崎商店街連合会・筥崎まちづくり放談会・九州大学南博文教授、三者の話し合いで2004年7月にスタートしました。最初は論文持って行ったりパソコン持って行ったりしてたんですけど、商店街になじむということを考えた時に、そこでパソコンをパチパチしていても変わらない、ただ場所がそこにあるというだけで、それじゃ意味がないよねっていうのが自分たちの中にあって、それならかき氷屋をやろうということになりました。僕らも儲けようという目的はそんなにないから、「一杯飲めればいいね」って感じでやっていました。子どもは一杯50円、大人は100円で。子どもたちも「安いかき氷屋ができた!」ってそれから子どもたちが集まるようになって、徐々に遊び場にかわっていきましたね。9月になってかき氷屋はやめたんですけど、子どもたちは毎日遊びにきて。かき氷屋をやっていた時、こっちもプロじゃないからアタフタしてたら子どもたちが手伝ってくれて、最初からこの場所の運営って言ったらちょっと変ですけど、(子どもたちが)参加してくれて、それから居つくようになりましたね。
―最初の目的としては研究ありきではなかったんですね。
空き店舗を活用したきんきゃん
目的としては研究ありきではないようにしようと言うか、むしろ研究室の場所をつくろうということの方が大きくて、まずは街に出てみようという感じでした。 2004年7月に始まって、9月10月になっても子どもたちが集まるようになって、ふらっと来た人が「ここ何?」って聞いた時に、子どもが「ここ子どもの遊び場!」って言うようになって、「あっ、そうだよね」って思って、自然発生的に遊び場となっていきました。2005年度からは研究室としてではなく、自分たちの場所として自分たちで運営費をカンパしたり助成金をいただいたりしながらやっています。
■活動概要
―きんしゃいきゃんぱすとは何ですか?
簡単に言っちゃえば子どもの遊び場です。商店街の中のお店の一つとしてきんしゃいきゃんぱすっていう場所があって、毎日だいたい16時から18時くらいまで開いています。―活動の目的は?
子どもたちの遊び場という日常的な空間の提供です。ただし、地域とのつながりや商店街の活性化は、(付随する結果とはなるかもしれないが)それ自体が目的ではありません。商店街連合会・まちづくり放談会・子ども会などとの関係は、あくまで協力関係であり、適度な距離感をとりつつ、子どもの主体性を重んじて活動をしています。画用紙で遊ぶ子ども達
―活動の内容は?
何をしてるのかってよく聞かれるんですが、ただ子どもたちと遊んでいる(笑)。遊びのプログラムのようなものはなくて、やりたいことをやりたいようにやる。大学生も子どもを遊ばせるというよりは、一緒に遊ぶというスタンスです。遊びをこちらから用意するのではなく、好きに自由に、一緒に遊んでもらっています。基本的には子どもがきたら「さあ遊ぼう」という働きかけをするのではなくて、「お帰り〜、今日どうやった?」って話をしたり、そうすると子どもも声かけてくるし。「ただいま〜」って子どもがやってきますね(笑)。自然な感じです。「迎えいれます、お客様です」って感じじゃなくて、家に帰ってくるような感覚ですね、それで自然ともう遊び始めているような感じです。近くの公園で
―具体的にはどのような遊びを?
鬼ごっこをしたり、近くの公園で遊んだり、ただ話しをするだけでも子どもにとっては意味のあることだし、個人的に面白いと思うのは商店街のお店を子どもたちが取材したりしていますね。あとは卓球したり、バトミントンしたり、オセロしたり将棋したり。遊び道具はもらいものが多いですね。―その他にも活動はありますか?
基本的には平日にきんしゃいきゃんぱすを開けていますが、イベント的になってきた行事としてピクニックや九大探検、地域行事への参加などがあります。ただ最初から行事ありきではなくて、何をしたい?ということで子どもたちにアンケートをとって、じゃあプールに行こうといって夏にプールに行ったりしています。夏休みにプールへ
プールで遊ぶ子どもたち
■きんきゃん一問一答
―親御さんや商店街の方の反応は?
八百屋に隣接するきんきゃん
当初は「最近子どもたちが心理学の学生の所に連れ込まれて何かされるらしい」って噂が立ったようです(笑)。2004年の末にPTAの方々が見学に来られて、こういう場所なんですって見てもらったら理解してもらえました。PTAの方の子どもも遊びに来ていましたしね。子ども会育成連合会の紹介などを通じて徐々に知られるようになりました。 商店街に関しては、最初は「何だこの学生たちは」っていうのがあったかもしれないけど、毎日やってるし、今は普通の会話をする仲になっていますので、それはやっぱり毎日の活動を見ていただいているからだと思います。最初から「協力を依頼します」ってお願いをしたりはしていなくて、むしろ徐々に仲良くなっていきましたね。面白いですよ、飲みに連れていってもらったり、飲み会にいつの間にか参加してたりだとか(笑)。
「自転車のとめ方が他のお客さんの迷惑になるよ」だとか、「ちょっとうるさいんじゃない?」って言ってくれますから、何も言われずに心の中で思われているよりありがたいと思っています。 子どもとの関係にしても、最初は「あんなことしよったよ」って僕らの方に注意して来ていたんですけど、次第に直接子どもをしかってくれている場面だとか、逆に子どもが八百屋さんのところに遊び道具が飛んでいったりしても「まあ大丈夫大丈夫、まあいいよ」って言ってくれます。子どもと地域の関わりに変わってきています。
―誰が行ってもいいんでしょうか?
もちろん問題ないです。基本的に子どもの遊び場と言いつつも、別に子どもに限る必要はないと思ってて、誰でもフラーっとOKです。商店街に来た人が買い物ついでに立ち寄ったりだとか、おばあちゃんが椅子に座って子どもが遊んでいるのを見たりだとかしています。 呼ぶときは一応子どもの遊び場と呼んでいますが、コミュニティスペースというか、誰が来ても問題はないです。大学生が遊びに来てもOKです(笑)。―子ども会など他の団体との違いは?
日常性がすごくあります。毎日開いているから子どもの生活の範囲内なんですよね。わざわざ何かに行くとか、大会があってそこに行くのではなくて、帰り道に立ち寄る場所というのが一つ大きく違う点だと思います。ランドセル背負ったまま遊んでいる子もいるし。 あと一つは完全に子どもの論理で場が動くというか、子ども会だと親が子ども会に入れてないと子どもは参加できないだとか、そういうのがあるんですね。本人が入りたくても親が入るかどうかという側面を子ども会は持っているので、「誰が来てもいい」っていうのはうちの特徴かもしれないですね。―箱崎は新旧の住民が入り混じっている地域ですが、きんしゃいきゃんぱすに来る子どもたちはどちらの子どもが多いのでしょうか?
僕の知る限り、常連の子レベルでは両方ありますね、入り混じっています。新住民/旧住民という区切りよりもむしろ、きんしゃいきゃんぱすを拠点に、その周辺に住む子たちが遊びに来ている感じです。地理的な要素の方が大きい。―活動をしていてうれしいことは?
後継者宣言が結構あって、「自分が大きくなったらここやりたいんだけど」とか「私九大に入るから」って、「その時にもし(きんきゃんが)なくなっててもまた作るから」って、嬉しいですね。―資金的にどうやりくりしているのでしょうか?
商店街の一店舗なのでやはり家賃がかかります。2004年度に関しては、出所としては研究室です。光熱費に関しては商店連合会と放談会がもってくれました。2005年度は東区のコミュニティ・ユースというところから助成を受けましたが、年間10万円だったので、この年はほぼカンパ、手出しをしながらやりましたね。2005年度がいちばんしんどかったんですけど、2006年度になって、文科省の地域子ども教室といって、子どもの居場所づくりの一環で、全国各地に10万か所つくりましょうと。既に活動の実績があったから助成を受けることができました。2007年度はハウジング&コミュニティ財団という住宅関係の財団法人からサポートを受けました。 今年度は助成をあえて取っていません。スタッフができてきているし、遊び道具を買う必要もないだろうと。モノが溢れてもあれだし、遊びっていくらでも作れますから。七夕の願い事
―活動メンバーはどのように集まってきているのですか?
口伝えですね。一番最初は研究室のメンバー3、4人ぐらいでやっていて、徐々にメンバーが変わりつつ今です。大学生のメンバー募集は特にはしていなくて、その場所を知って遊びに来た人が居つくかどうかですね。基本的にはウェルカム、だれが来てスタッフになってもOKなんですが、その場所を自分の居場所とできるかどうかですね。子どもたちにとっても居場所なんですが、大学生スタッフにとっても居場所じゃないと活動は続かないから、自分がそこで遊んでいて居心地いいという時に既にスタッフになっている感じですね。入れ替わりもあるし、どこまでがスタッフなのかも良く分かりません(笑)。―研究との兼ね合いは
最初は研究として始めていませんが、この場所を通じて見たこと、感じたことを論文にするのはアリだと考えています。こちらから何かインタビューをしたりアクションを起こすのではなく、起こったことをありのままにまとめていこうというスタンスで、研究としてやっていこうという一区切りをつけました。 あくまでスタンスとして、ありのままを見て、そこから何かを掴み取るという研究だったらいいのかなと考えています。こちらから変にアクションかけて、子どもがどう反応するか、そういうことではないならありかなと。でないとそれこそ大人の意図が入り過ぎちゃうので。―固定層(の子ども)ばかりの居場所とはならないのでしょうか?
常連中の常連はずっといるんですけど、その他の子は来たりこなかったり、ある時期ずーっと来てて、ある時期ずーっと来なくって、というようなサイクルが色々とあって、うまいこと行っているというのがあります。ただもう一方で、こういう場所にいつかない子どももいるんですよね、やっぱり。子ども同士で遊んだりだとか、年相応の学年になると。子どもの遊びは本来子どもだけで遊んでいたと思うので、だから来ない・来られない子どもがいるのは当然だと思うし、そこに変に働きかけはしません。―きんきゃんに遊びに行って、子どもの社交場、駄菓子屋を思い浮かべました。
箱崎はもともと駄菓子屋があったんですよ、僕の知る限りでも三つはあったんですね。でも今は全部消えちゃったので、コンビニに買いにいって、コンビニのおばちゃんと仲良くなっている子がいるくらいです。子どもの場所がない中で、こうした活動をやっている意義を見出すとしたら、そういう所かなと考えています。―九大は伊都キャンパスに移転しますが、活動に支障はでるでしょうか?
基本的にはないと思っています。箱崎にあるきんしゃいきゃんぱすですので。大学が移っても問題はないです。―今後の活動の展望と課題は何かありますか?
6時になり皆家へ帰っていく
取材でよく聞かれるんですが、展望に関しては聞かれると困ってしまうというか、、、すごく簡単に言うと毎日開け続けるだけです。大人の変な意図をあんまり入れたくない、子どもが活き活きとその場で遊ぶために、子どもにこういうことを学んでほしいとか、地域の人と接点をつくろうとか、そういった目的を前面に押し出すことへの抵抗感というか、、、そういう意味で、将来はこうしていこう、地域の人をスタッフにいれてどうしていこうということを、語ってしまうこと自体に抵抗があります。むしろ毎日開くということが重要で、そこで子どもがどう振舞うのか、どういう場所になっていって欲しいと思うのかは子ども次第ですし、そういう意味では子どもが主体です。まあ将来子どもたちが大きくなった時にふらっと立ち寄れる場であり続けたいとか、夢的なものはありますよね。 課題に関しては、お金の問題もそうですし、後は子どもとどう関わるのか、関わり合いに関しては色々学ばされる部分もありまして、例えば相談などにどう対応できるか。そうしたかかわり合いについてスタッフは皆それぞれ抱えながらやっていると思います。あえてミーティングはしていないんですよね、学生同士の。こういう場面に出くわしたらどうしようだとか、話し合ってはいなくて。皆が画一的なかかわりをする必要はないなと、子どもが何かやったときに叱る学生もいれば、「まあいいよ」という学生もいる。しかしそうした相互作用も学生にとって勉強となる場だと思います。そうした意味で、それぞれが抱えているかかわり合いの課題は割りとポジティブに受け止めています。 まぁ、あとは商店街の邪魔にならないか気を配るくらいですね。
再開発が進み、マンションの建設ラッシュのただ中にある箱崎地区。子どもの遊び場が減っていくと同時に、それは新たな子ども達が箱崎に流入してくることでもあります。子どもの居場所がないと叫ばれる一方で、怪奇な事件により遊び場から遠ざけられてもいる子ども達。子どもを取り巻く社会環境はますます複雑になっていますが、今回紹介した「きんしゃいきゃんぱす」は、地域(住民)と大学(住民)の関わりの一例であると同時に、子どもの遊び場、居場所として新たな可能性を秘めているように感じます。
来訪は子どもにかかわらず誰でもOKとのこと。あなたも一度きんきゃんで遊んでみませんか?
→きんきゃんが掲載された新聞記事(PDFファイル)はこちら
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■□ きんきゃん写真集 □■
※ きんきゃんに関する写真は こちら をクリック(別ウィンドウでスライドショーを表示します)(C)2008 箱崎九大記憶保存会